難聴亭日乗

つれづれなるままに その日ぐらし

地獄タクシー

今日タクシーを利用したときの話。

荷物が大きかったのでトランクを開けてもらったのだけど、どういうわけか積んでいる途中でトランクを閉められてしまった。当然私は頭を打った。バーーーンって打った。当たり前だ。積んでいる途中に閉めたらそうなる。頭じゃなくても、肩だったり腕だったり、どこかしら打つ。なぜなら積んでいる途中だから。

「痛って〜〜〜」とやっていたのだけど、運転手は一瞥もせずにバタンとトランクを閉め直して、何も言わずに運転席へと戻っていった。え??何事もなかったの??どゆこと??キング・クリムゾン発動させた??トランクを閉めるっていう「動き」が消し飛んで、私が頭を打った「結果」だけが残ったってこと??は??

 

釈然としないまま乗り込んだら、すげえめんどくさそうに「どこ?」と訊かれた。「どちらまで?」とかだろ普通。後部座席から頭ブチ割ってやろうか。と思ったけど「怒る人間はバカ」なので感情を落ち着かせた。ありがとう、スマナサーラ師。

しかし気がすまないので、こいつはどうしようもないダメな人間で、「人が荷物をトランクに積もうとしている途中に閉めると危ない」という自明なこともわからない可哀想なやつなんだ、と思うことにした。やれやれ、どうしようもない人間もいたもんだ。よくいままで生きてこれたな。こんなクソアホに対して何かを思う1分1秒は人生において無駄の極み。

 

とか考えているうちに、だんだん怖くなってきた。どうしようもないクソアホの車に乗ってしまった。これってものすごくヤバいことなのでは。信号の仕組みとかわかってるのかな??「信号が赤のときは進んではならない」とか理解してる??だって「人が荷物をトランクに積もうとしている途中に閉めると危ない」がわからないレベルの超アホですよ??わかってない可能性あるな。「歩行者を轢いてはいけない」とか大丈夫か??いける??

気が気じゃなかった。出していいスピードの上限とか理解しているのか。あと左側通行とかもいけるかな。速度、というか数字ってけっこう難しい概念だし、左右というのも相対的なものなのでたいへん高度だ。絶望的なアホであるこの運転手がそれらを解している可能性は極めて低い。

 

そもそも免許持ってるのか?いま放送している日曜劇場『下剋上球児』の主人公が、「教員免許を取得できなかったので偽造して教員になっていた」という衝撃の展開あったけど、それなのでは?運転免許偽造してタクシー運転手になってない?こいつ。とても取得できるとは思えないんだけど。アホすぎるので。「おれ、くるま、すき。くるま、はやい。くるまのしごと、する」ってレベルだよ多分。ああ!!だから「どこ?」としか言えなかったのか最初!!理解!!

 

みたいなことをあーだこーだ思っていたら、目的地に着いた。すごい。ちゃんと着いた。メーターに表示してある料金も、四桁の数字でめちゃくちゃ難しいんだけど、ちゃんと言えていた。偉いな〜〜〜。おつりの計算はさすがに難易度鬼なので、料金ぴったり支払った。そしてトランクから荷物をすばやく取り出した。なぜなら「人が荷物をトランクから下ろそうとしている途中に閉めると危ない」がわからない可能性が大だからである。警戒を怠らなかったおかげで、無傷で荷物を下ろせた。クソアホはすぐさま去っていった。

 

生きて目的地に着けてよかった。世の中は難しい。タクシーを利用するとき、トランクに荷物を積もうと思ったら、この運転手は「積んでる途中に閉めたら危ない」ということを理解しているだろうか?というのを考えねばならないのだ。読者諸賢も気をつけてほしい。「そんなやつおらんやろ」と油断していたら、トランクに頭を挟まれてしまうのである。

ヤツは確かに存在するのだ。