難聴亭日乗

つれづれなるままに その日ぐらし

黙字録

昨夜、食事に出かけたとき、モツ鍋のポスターを見ていて「モツって何?」と訊かれた。ホルモンのことだよ、というフツーの返答しかできなかったが、そこから「なんでモツって言うんだろう」と話が膨らんだ。ホルモンは「放るもん」から来ている、みたいな説は(正確かどうかはわからんが)よく聞くけれども、モツはなんだろう。長持ちするから、とか?なんて話した。

その後、新明解語源辞典で「もつ」を引いてみると、「内臓の意の『臓物(ぞうもつ)』の上略」とあった。極めてシンプルだったのね。

 

そんな疑問を膨らませてくれた天才言語学者氏、ふとした拍子に色々と言葉についての疑問を寄せてくれる。「knockってなんで k 付いてるの」とか。黙字*1のkだなーという説明しかできず、なぜと言われると難しい。

調べると、古くはこの k を発音していたのだそうだ。knock はクノックで、knife はクナイフだった。しかし、発音しにくいので消えていった。綴りを残したまま。よくあるやつ。ちなみに兄弟分のドイツ語では kn- の k は発音されるらしい。確かにクナッパーツブッシュ knappertsbusch とか、クヌルプ knulp とか発音してるね。

 

そういえばこういうの説明された本持ってたなと思って、角川ソフィア文庫『英語の謎』を引っ張り出した。ざっと見たところ k については書かれていなかったが、似たような読まない w については書かれていた。

writeは「ライト」と発音します。w は発音されません。どうして w があるのでしょうか。その答えは簡単です。かつては w が発音されたからです。(中略)では、なぜ w の発音が落ちたのでしょうか。難問ですが、w と r は連続して発音しにくかったのではないかと推測する学者もいます。

まあ同じような感じ。

発音しにくいから変化するやつ、フランス語でも語頭の s が発音しにくいらしく e を足したりするのとかある。英 space 仏 espace みたいな。

 

色々と訊かれて、勉強不足で即答はできないのだけど、調べるきっかけになるので楽しい。

言語感覚が鋭敏だな、と思う。凡才の自分には羨ましい。

*1:発音されないのに書かれる文字のこと