難聴亭日乗

つれづれなるままに その日ぐらし

金雀児

少し散歩してきた。夕食でマクドナルドを呼び寄せてしまったから。罪深き行いだ。

外が涼しい。しばらく歩いても汗をかかない。ひんやりした風が気持ちいい。いつもは音楽を聴きながら歩くが、今日は虫の音がちょうど良かった。

 

こういう冷涼な空気に触れると、ボードレール「秋の歌」が味わい深い季節だなと思う。「やがて沈まむ、冷かなる闇のさなかに。さらばよさらば、束の間の夏の光の烈しさよ(鈴木信太郎訳)」

毎年引用している気がするな。また一年経った。すぐ冬が来る。十二月にはきっと萩原朔太郎を引用するだろう。毎年変わらない。

 

 

今日は朝から色々と動いた。待ち時間がけっこうあったので、暇つぶし用の本を読む。紅山雪夫『フランスものしり紀行』ロワールの章にあったプランタジネット家名の話がおもしろかった。

アンジュー伯ジョフロワ(ヘンリー二世の父)が初夏になるといつも genêt(エニシダ)の花枝を兜にさして出陣したので、Plantagenêt(エニシダさし)と呼ばれたことに由来するらしい。これだけでも「へえ~」と唸ったが、続く補足も素晴らしいので引用する。

 中世のヨーロッパでは、戦いが長引いても冬になると自然休戦に入り、初夏になって気候が良くなるとまた再開されるのが習慣であった。ちょうどジュネが咲く頃で、若きアンジュー伯は冑にジュネの花枝をさしたのだ。梶原景季がえびらに梅の花枝をさして出陣したという話を思い出させる。

中世ヨーロッパでの戦の習慣と、ジュネの咲く時期が関連して覚えられる。さらにわが国の武士の似た逸話まで持ってくるのが、学識の豊さを感じさせてオシャレである。

 

 

気がつくともう明け方近い。平泉澄『物語日本史(中)』を少し読み進めて寝る。