フランス語 couleur は、ラテン語 color から来ている。色を意味するこの単語は、celare という動詞と関係している。これは「隠す」ことを意味する。
あまり使わないが、フランス語 celer「〈意図・感情など〉を隠す」はこの動詞から。
そんな隠された色の世界に飛び込めば、入り口から知らないことだらけ。
たとえば「白」フランス語で blanc スペイン語で blanco イタリア語では bianco ポルトガル語は branco ...
ほうほう、これだけ揃いも揃って似通っているのだから、きっとラテン語から来たのだろうね。と思って調べてみれば、白を意味するラテン語は albus と candidus の二つ。
これらは、古フランク語で「輝く,明るい」といった意味の *blank に取って代わられてしまったようだ。古フランク語と言われてもなかなかピンとくるものではないが、なんでもゲルマン語を起源とするフランス語単語のほとんどは、この言語から来ているらしい。
ところで「白」の座を奪われてしまった二つの単語は、現在のフランス語にどういう姿で残っているのか。
albus は aube「夜明け」や aubépine「セイヨウサンザシ」というバラ科の花の名に、
candidus は candidat 「候補者」や、ヴォルテールの小説でもお馴染みの candide「純真な,無邪気な」にそれぞれの名残がある。
余談。トガと呼ばれる古代ローマの正装がある。
用途や地位によって多種多様な色があるが、官職候補者が着るのは純白の toga candida である。果たして光り輝いて見えるのは候補者のときのみかな。