難聴亭日乗

つれづれなるままに その日ぐらし

マルちゃん

急に寒くなりすぎ。もう夜に半袖Tシャツでウロウロは厳しいね。一枚羽織って出かけるのがちょうどよい。Gジャン好きなんですよね。この時期しか着ないからガンガン着ていこう。

 

西尾潤『マルチの子』読んだ。

劇的な展開!というのはあまりなくて、あくまでリアリティー重視で書かれている感じ。それもそのはず、あとがきによれば、著者自身がマルチ商法にのめり込んで借金に苦しんだ経験があったらしい。その実体験をもとに書かれている。

 

「ご縁」という言葉を聞いたらマルチを疑え、とよく言われている。主人公が繋いでいった「ご縁」は恐ろしいものだった。周りがどんどんマルチ関係だらけになっていく。マトモな人たちとの縁は切れていく。父親に「そんなに売りまくらなあかん仕事、もうそろそろやめとけ。かっこ悪い。ほんまに友達なくすぞ」と吐き捨てられたときの主人公の心情を引く。

 友達なくす……その言葉が胸に刺さった。ちゃんと友達を見てこのビジネスを勧めているし、最初にスポンサリングした友達とは疎遠になったけど、今は新しい縁が続々とできている。最年少ゴールド最有力候補とみんなの尊敬の的だ。

 友達はむしろ増えているし、と真瑠子は一瞬にして開き直る。

順調にそっちの世界から抜けられなくなっていってるって!!開き直んな!!だんだんとそっちの世界でしか生きていけなくなっていく。異常な熱狂の中で、皆が皆を称え合い、認め合う。皆に期待されている。投げ出せない。突き進むしかない。実績を上げるために、自分で商品を買う。借金が増えていく。

 

 でもやはりSBJNで、ネットワークビジネスで成功したかった。

 家族に呆れられながらも続けているのである。諦めたくない。

 今、目標を投げ出してしまうことは、これからの人生すべてを諦めてしまうことに繋がる気がした。

 認められたい。

 自分の好きな自分でいるために。

 大丈夫。大丈夫。

ダイジョバないときの「大丈夫。大丈夫」非常に危険。やめた方がいい。でも熱狂の中にいる人ってこの判断できないから、大丈夫ってことにしてとりあえず現在の自分を、たとえハリボテでも保ってしまうんだよな。何回か書いているけれど、私はやはり熱狂を恐れている。熱冷まシートは必携なのだ。だから何事も動き出すの人より遅くなっちゃうんだけどね。難しや。

 

 中毒……なのだろうか。誰にも相手にされなかったそれまでの人生が、このビジネスに出会ったおかげで激変した。

 人に認められるのが嬉しい。その一心でここまでやってきた。もっと、もっと人に認めて欲しい。

 そんな気持ちが自分の中に巣食っているのは否定できない。そしてその気持ちは、この仕事を続けていく限り満たされるであろうことは予想できた。グループを作る。サポートする。感謝される。どんどん下にメンバーが増えていく。彼らをサポートする。感謝される。その繰り返しだ。

中毒……でしょうね。どの世界でも承認欲求は人を飲み込んでいくね。

この本読んでて思ったけど、マルチってすんごい大変そう。めっちゃ真面目な人しか続かんぞ。少なくとも私は絶対に無理だ。自分のグループ育てていって、サポートしての繰り返し、みたいなの絶対できない。あんまり「みんなを幸せにする!」的な理想もないしな。おこがましいとは思わんかね。

 

あとがきで著者が「マルチにはまりやすい人の三つの傾向」を挙げていた。①自分に満足できていない人②勉強熱心な人③自己評価の低い人、だそうだ。私の場合どうだろうねと考えてみる。

まず①、そこそこ満足できてはいるかな。いまの環境では自分の能力が発揮できない!埋もれてしまっている!もっとビッグになりたい!バンバン稼ぎたい!みたいなのがまったくない。こんなもんだな〜〜と思って暮らしている。20代前半の頃とかだったらそれなりにギラついてたかもしれないけど、もう落ち着いた。

そして②、私ほど勉強不熱心な人間はそういないだろう。好きなことしかやってこなかった。朝の早うから商品の勉強して、ミーティングして、セミナーしてを夜中まで毎日毎日、無理すぎる。1日で飛びます。

最後に③、自己評価は低くはないかな、高くもないけど。平々凡々やと思います。勉強不熱心なわりにはそこそこやれてる方でしょ。私ってダメだ……誰にも認められてない……なんてことはないです。けっこう一目置かれてたりとかするんちゃう?知らんけど。

 

結果、ハマんなそうだな〜〜と思ったけど、油断は禁物。そういうやつに限ってコロッと取り込まれちゃったりするから。子供の時からそういうのめっちゃ考えてきた。夜道が怖くて「おばけなんていないさ〜」とか歌うけど、もし「いない」と決めつけたことによっておばけさんが立腹して、「この生意気なガキを驚かせてやろう」となったらヤだなって。「いるかいないか定かじゃない感じがおばけ最大のロマンだよね」とかブツブツ言ったりして、どうにか出てこない方向でお願いできるように思考を巡らせてきた。

世の中、魔境への穴ぼこばかり。警戒警戒!