難聴亭日乗

つれづれなるままに その日ぐらし

言葉足らずの愛を

『らんまん』最終週見た。バカでかい愛の物語だった。制作陣の愛も存分に感じられた。成長した千鶴ちゃんを松坂慶子さんが演じるのとか、泣かせるよね。輪が巡ってるって感じした。

 

小学校も出てない、留学もしていない、研究者として認められるわけないだろ!虫けら同然!って扱いだった万太郎が、これほどの実績を残した人に博士号を与えてないの、さすがにヤバいですからって理学博士に推薦されるのアツい。万太郎はそれだけのことを成し遂げてきた。ただ植物が好きだという思いだけで。お寿恵ちゃんも隣を走ってきた。この人といっしょに冒険するのだと決めたときから、ずっと。日本中全ての草花が載った図鑑を作るという、先の見えない、果てしなく無謀な旅。

 

そんな大冒険も、やっと終りが見えてきた。だがお寿恵ちゃんの体調は優れない。治療法のない病に冒されていた。どうか間に合ってくれ。図鑑の仕上げを急ぐ万太郎のもとに、頼れる仲間たちが集結する。波多野と藤丸、野宮さん、佑一郎くん、丈之助さん。

皆の協力もあり、ついに完成した図鑑。万太郎は、最後にもう一種、新たに発見した新種を加えた。スエコザサ。そう名付けられた植物、学名は Sasa suwekoana Makino、寿恵子の名と、命名者である槙野博士、二人の名はここに永遠に刻まれる。

お寿恵ちゃんは、自分が居なくなったら…と話し始める。「いつまでも泣いていないで、草花にまた会いに行ってね。そしたら、私もそこにいますから。草花と一緒に、私もそこで待ってますから」

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「永遠」について、昔よく考えていた。幾度も Ars longa, vita brevis「技術は長く、人生は短い」を引用してきた。学問というのは、連綿と受け継がれていくものである。誰もが雑草と見做し気にも留めなかった草花たちを、万太郎は「雑草なんて草はない」と見つめ続けた。失われてしまう前に、図鑑にして残した。彼の愛した草花は、次の、そのまた次の、その遥か先の未来まで生き続ける。新しい学問や、発見に繋がっていく。

植物を愛した万太郎の物語。そんな万太郎とともに生きてきた寿恵子、ふたりの愛の物語。溢れんばかり爛漫の愛が、学問という永遠の営みの中に咲き誇っている。素敵なドラマだった。