難聴亭日乗

つれづれなるままに その日ぐらし

動物たちの小宇宙

夕方、買い物に出たら小学生がワイワイと下校していた。2年生くらいの男の子が「あっ!〇〇さん居た!」と前を行く集団の方へ走って行った。

このくらいの時期はまだ男女の隔てなく無邪気に遊んでいた。高学年になると、こんな風に名前呼んで走り寄ったりするの憚られるようになってくよな。とか思ってぼんやり男の子の方を見ていたら、駆け寄った先に居たのは男の子だった。

さん付けで統一するやつ、ニュースとかで見たことはあるけど、実際に観測したの初めてだ!変わらない下校風景でも、世の中じわじわと変わって行ってるんだな。

 

川原繁人 feat.Mummy-D・晋平太・TKda黒ぶち・しあ著『言語学的ラップの世界』読んだ。

川原先生、けっこうガチめな日本語ラップ好きだったんだな。愛と誇りを持って取り組んでいる言語学の見地から、これまた大好きなラップの世界を探検していく。好きが溢れてる素敵な本。

 

日本語ラップ、私が子供の頃けっこう街中に溢れていた。 KICK THE CAN CREW大好きでよく聴いてたな。本書を読んでから久しぶりにCD引っ張り出して聴いてみたんだけど、sayonara sayonara 出だしからヤバい。「be quiet」と「指くわえ」で踏んでるのとか。本で解説されてたイツナロウバの「It's not over」と「静まろうが」のやつだ。

なにいまさらキックの韻に驚いてんだって感じだけど、日本語ラップ分析読んでからだと改めて衝撃受けちゃうから!というかキックなんて最高なんだから何回衝撃受けてもいいでしょ!

 

そんな大好きなKICK THE CAN CREWと、あとはRHYMESTERと、他なに聴いてたかな。m-floRIP SLYME、SOUL'd OUTなどなど。

映画『狂気の桜』見たのきっかけでKダブを知って、そこからキングギドラ聴いたりもした。公開処刑、多感な時期には刺激的だった。おめえのグレートフルデイズも今日まで!

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日本語ラップは言語芸術である」と川原先生は主張している。その前の章で、ラップは「韻を踏む」という制約があるので、日常会話では組み合わされそうにない単語が組み合わされる、その「異化作用」によって日常的な言語活動が破壊され、新たな創造的表現が生まれる、つまり「制約は創造の母である」という話をしておいての「ラップ=言語芸術」論の流れ、華麗だ。

川原先生は「言語学というレンズ」のおかげでラップの芸術性を深く知れた。敬愛するラッパーたちのやっていることも、「この人たちがやっていることは、これだけすごいことなんですよ」と証言できた。「言語学を研究する意義はここに(も)あると感じられる」と書いてこの章を締めくくっていた。じーんときた。言語学が世の中のためにできること、たくさんある。

 

併せて川原先生とMummy-Dの対談動画も見た。

この中でMummy-Dが「ラップがなくなることはない」という話(31:37〜)をしている。「21世紀、ラップというものを知っちゃった僕らは、もうラップがない世界は想像できない」「単純に、歌だったらしのぎ切れない無調音楽になった瞬間、シンガーはどうするのか。僕らはラップでその時間をしのげる。だから自由度が高い」「なにか困ったときにじゃあラップにして言ってみよう、っていうのは選択肢の一つとしてずっとあり続けると思う」と。

これあれだ!ザ・グレート・アマチュアリズムの「オレの時代が終わっても このブームが去って明後日にも ごみ箱漁っても 電気すらなくなっても 最早とめられないこのアートフォーム」だ!

 

日本語ラップ。いままさに「芸術」として確立されようとしている、その域まで達しようと燃えたぎっている若くてアツい音楽ジャンルだ。あーーーーB-BOYイズム聴き直そ!

 

最後に、この本のテーマソングも最高なのでCheck!してみてほしい。

動画はショートバージョンだけど、今日(11月30日)フル音源も配信されたのでバリバリ聴き込むぞ。