難聴亭日乗

つれづれなるままに その日ぐらし

オモコロのグルメ審査員選手権の記事読んで、味の素のザ★シュウマイとザ★チャーハンが食べたくなったので買いに行ったけど、両方売り切れてた。なんでだ。みんな記事読んだのか。

ニチレイの本格炒め炒飯を買いました。安定の美味さ。

 

 

高野秀行『語学の天才まで1億光年』読んだ。

辺境ノンフィクション作家の超ド級語学体験記、ということで語学要素だけでなく冒険や青春の話が盛りだくさんで楽しい本だった。エピソードがとにかく強すぎる。インドで同じ宿に泊っていた白人女性に付いて行ったカトリックの施設で出会った小さなおばあさん、後から知ったその正体はマザー・テレサだったり。そんなことある??

そのインドで盗難に遭って、英語で詳細に説明しなければならなくなり、「トラブルは人を強くする。語学も鍛えてくれる」という気づきを得る。これが著者のRPG的語学冒険で初めに得た魔法の剣だっただろう。いや、これはまだ木刀だったかもしれない。それ以降、必要に迫られる度に剣を手にし、開かずの扉をこじ開けていく。

 

言語は二種類あると著者は言う。「情報を伝えるための言語」と「親しくなるための言語」だ。機械翻訳が発達し、語学の必要性が問われるいま、果てしのない言語学習の旅を続け、「親しくなるための言語」で世界中の人たちと触れ合ってきた著者のこの言説には重みがある。

 翻訳や通訳は、ガラス越しでの会話みたいなものだ。興味を抱いた他人と、ガラス越しではなくじかに触れたいと思うことは、人間の本能に根ざしているのかもしれない。互いの心臓の鼓動を聞くような語学は生き続けると、私が確信するゆえんだ。

 

ミャンマーのシャン州にある小さなエリア、ワ州の話が興味深かった。ここでの話が詳しく書かれた『アヘン王国潜入記』読みたすぎる。書名に「アヘン王国」とある通り、ワ州は世界最大の麻薬密造地帯、別名ゴールデン・トライアングルの核心部。非合法アヘンの六割がそこで作られていると言われるエリアだ。

アヘンはまあ置いといて、そこで話されているワ語の話が面白かった。乾杯は「ア」でいいらしい。「私たち二人」という人称代名詞だという。ワ人はお酒を飲むとき、竹の杯一つしか使わないらしい。二人で持って、「ア」と言って交互に飲むのだと。かわいいな。飲み終わると次の二人一組が「ア」する。みたいな感じでどんどん「ア」していくらしい。おもろ。

著者が「ア」を迫られたエピソードも抜群に面白い。

 もっとも、私が参加すると、村の人たちが競って私と「ア」をしたがるので、毎回悩まされた。一気飲みの連続はこたえる。「もう飲めない」と断ろうとすると、「あいつ(他の人)とアができて、俺とはアができないのか」などと、世界中に存在するタチの悪い酒飲みと同じようなことを言う。「もうアはやめてほしい」と私は何度も思った。

「俺の酒が飲めないのか〜〜」は世界共通らしい。

 

著者は様々な言語を学んでいった初期の段階では「言語とはどうしてこんなに違うんだろう」と思ったそうだが、いまでは「人間の言語はどれもなんて似ているんだろう」と思うようになった、とエピローグに書いている。言語好きの間ではよく「極端に異なった言語はない」とか、「言語に貴賤なし」といったことが言われている。うんうんまったくそうだよな〜と思うけど、こういう色んな言語を体当たりで学んで冒険してきた著者が言うと響きが違う。こんな面白い本のエピローグに書かれると、そりゃ響く。「人間はみな同じ」って言葉も。